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配置図

新興住宅地における、住宅を考える。大阪府和泉市の丘陵地帯を開発し新たに住宅地となったこの場所は、開発以前にあった歴史性や場所性といった建築を計画する上で意識すべき要素が失われた。地盤改良され、分譲地として売りだされた土地から徐々に増殖するように住宅が建ち並び、教育施設や公園、病院等のインフラが整備され元の姿とは全く異なる景色へと変貌していった。本計画では既存コミュニティの存在しないこの地に、一軒の住宅から発する近隣コミュニティの形成を目指した。

ダイアグラム1DTP

「中庭のある家に住みたい」というクライアントの要望をヒントに、戸建住宅の庭として、また近隣コミュニティ形成のツールとしての庭を計画した。いわゆる一般的に計画される中庭は、ドーナツ状のフォルムを持つ建築の中心部に位置し、住居内部に採光や通風、緑を取り込むためのものである。本計画では住居のヴォリュームに包まれつつも、外部に少しだけ開かれた中庭を設けた。ドーナツ状にくり抜かれたヴォリュームの端部を持ち上げ、螺旋形状とすることで立体的に包まれた中庭を持つことが可能となる。螺旋形状を木造軸組で構成する際、庭に面する外壁と隣地・道路に面する外壁とでは高低差があり、大梁を繋ぐ小梁にねじれが生じる。そのため構造材の加工には三次元プレカット技術を取り入れた。建築物のヴォリュームによってオープンとなった中庭に対し、内部空間のプライバシー保持を外構計画によっておこなった。開発時の地盤改良によってできた法面を利用する。一見ハードな印象を与える割栗石を配し、庭へのアプローチを限定し、外部からの視線を軽減するため常緑のシャシャンボを植樹した。

平面 [更新済み]

玄関から一番奥の夫婦寝室までチューブ状に続く内部空間にはチューブを切断する壁を設けず、空間の屈折や段差によって室を分けることとした。空間の連続性を強調すべく、庭の中央に一本のシンボルツリーを植樹した。各シーンによって異なる見え方をし、空間の高低差を意識づける演出をおこなった。庭を三次元的に構成することで、住居内部のシーンにヴァリエーションが生まれ、単一的な中庭空間ではなく、回遊する生活に即した中庭を提案することができる。地域のランドマークになるべくシンボリックなフォルムを持つこの建築から地域コミュニティが形成されていくだろう。

断面dia4 [更新済み]

 

 

 

 

 


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