Think

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「中村さん、地蔵盆の段取り何とかなれへん?」
「しゃあないなぁ。うまいことやっときますわー。」
世帯、世代を越えこんな会話が飛び交う空堀町。この地域には大阪長屋と呼ばれる長屋が数多く存在する。戦火を免れたそれらは古くから伝わる歴史、文化、地域住民の気質を現在にまで継承し、独特なコミュニティを形成している。トンネル長屋と呼ばれるトンネル状の長屋を抜けると、細く入り組んだ路地が連なっており、長屋で暮らす人々の生活が路地にまで滲み出している。家の前で家庭菜園をし、洗濯物を干し、金魚を飼い、隙あらば植木鉢を置く。この地に境界線というものは存在しない。近隣問題等で都心部では見られない光景だが、何故成立しているのだろうか。大阪人の気質「うまくやる」という感覚が働いていると考える。元より大阪は商売の街として栄え、大阪人=商売人というキャラクターは今もなお引き継がれている。商売人気質の持つ独特なバランス感覚こそ「うまくやる」の根源である。
こういった長屋コミュニティが、年を経るにつれ減少している。空堀町を歩くとポツポツと空き地が目に付くようになってきた。長屋の老朽化、法律規制の問題から、長屋の維持保全が困難な現状である。しかし景色が変われど、大阪人の気質が存在する限り、空き地もまたうまく利用されるだろう。

「中村さんチの隣空いてもうたなー。」
「ほな、うまいこと使いましょか。」

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